鶏肉が好きで、普段から食卓にはよく登場する。あれこれ取り寄せては食べ比べたりもしてきたけれど、選ぶのは決まって「骨や筋をきれいに処理した状態のもも肉」だった。パックから出してそのまま切って使える手軽さには抗えないし、なにより食べる時に骨があると面倒くさい。
そんな「骨なし一筋」だった私の価値観がガラリと覆されたのは、ある日手にとった台湾スープの本がきっかけだった。
▼ 骨付き肉の底力とスープの美味しさを教えてくれた一冊
「台湾スープの本」をAmazonで見る
面倒くさがりが、わざわざ骨付き肉を買いに走った日
本を開くと、湯気とともに立ち上る滋味深そうなスープの写真がずらりと並んでいる。どれも猛烈に美味しそうなのだが、ページをめくってもめくっても、指定されているのは「骨付きもも肉」ばかり。
「食べるの面倒だし、手も汚れそうだし、嫌だなあ…」
そう思いつつも、写真の説得力に負けて、わざわざ鶏肉屋さんまで足を運んで骨付きもも肉を仕入れ、レシピ通りにスープを作ってみた。
ちなみに、台湾スープを作るときにぜひ使ってみてほしいのがこの台湾の「米酒(ミージウ)」だ。日本の料理酒とは風味が異なり、これを入れるだけで一気に本格的な現地の深い香りとコクが立ち上るので、我が家のスープ作りには欠かせない調味料になっている。
▼ スープが一気に本場の味に化ける、愛用の台湾米酒
「台湾米酒」をAmazonで見る
さて、そのスープを一口すすった瞬間、思わず目を見張った。スープに溶け出している旨みの深さが、普段の鶏もも肉で作るものとはまるで別物なのだ。さらに驚いたのは食べやすさ。じっくり火を通した骨付き肉は身離れが抜群によく、お箸を入れるだけでスルリと骨から外れる。7歳の息子も、大人の手助けなしで自分の手とお箸を上手に使い、骨だけをきれいに残してペロリと平らげてしまった。
唐揚げもカレーも。同じレシピなのに別次元になる
スープで完全に骨付き肉の虜になった私は、それ以来、普段の料理にも骨付き肉を投入してみることにした。
- 唐揚げ:いつもの下味で揚げるだけなのに、骨の周りの肉が信じられないほどジューシーで、噛み締めたときの肉汁の量が段違いになる。
- カレー:煮込んでいる間に骨からじんわり濃厚な出汁がルーに溶け出し、特別な隠し味を足さなくても、何時間も煮込んだようなコクと厚みが生まれる。
味付けも調理工程も一切変えていないのに、「肉を骨付きにしただけ」で、いつもの料理が格段にランクアップしてしまった。
フルーツと同じ。一番美味しいのは「境目」だった
よく「果物は皮と実の境目が一番甘くて美味しい」と言うけれど、お肉もまったく同じなのだと実感する。旨みもゼラチン質も、骨の周りにこそぎゅっと凝縮されている。
骨があるからこそ加熱しても水分が抜けにくく、しっとり柔らかく仕上がる。その上、骨自体からも極上の天然スープストックが溢れ出てくるのだから、美味しくならないわけがない。
今まで便利さ優先で骨なしばかり買っていた自分を振り返り、「私はこれまで、鶏肉の一番美味しい部分と旨みをまるごと捨てていたのかもしれない…」とすら思えてきた。
スーパーの精肉売り場でも、骨付き肉は骨なし肉より少し安く並んでいることも多い。いつものメニューをちょっとご馳走に変えたい日、ぜひ一度「骨付き」を手に取ってみてほしい。あの深い旨みを知ってしまうと、もう元のパックには戻れなくなるはずだ。

コメント