ジップロック味噌からステップアップ!絶滅寸前の「木桶」でお味噌を仕込んでみた

台所と道具

3年ほど前から、ジップロックで仕込む手軽な味噌作りを続けていた。簡単なのに驚くほど美味しくできるものだから、一時期は会う人会う人に「これ、家で仕込んだから育ててみて!」と熟成前のジップロック味噌を配り歩いていたくらい、すっかり夢中になっていた。(今思えば、突然生の味噌の袋を渡される方もなかなか迷惑だったかもしれない)

そんなふうにジップロック味噌で十分満足していたはずなのだが、昨年ふと、「木桶で作る味噌は、ジップロックと一体何が違うのだろう?」と気になり始めてしまった。一度気になると、もう止まらない。

調べてみると、木桶というのは適切な手入れをすれば100年以上使える代物らしい。裏を返せば「一度買ったら一生買い替えない」ということであり、プラスチック容器の普及も相まって、今や日本の木桶職人は絶滅寸前なのだという。

「いつか買えなくなる前に、職人さんの技術が息づいているうちに手に入れておかねば」という謎の使命感にも背中を押され、散々悩みまくった挙句、ついに清水の舞台から飛び降りる気持ちで木桶をお迎えした。

サイズもあれこれ悩んだが、日本の住宅事情と自分の胃袋と相談し、部屋の隅に置いておいても違和感のない「6kgサイズ」をチョイス。そこに5kgの味噌を仕込んでみることにした。

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蓋を開けた瞬間、台所が「蔵」になる

実際にひと夏を越え、仕込んだお味噌と対面して驚いた。ジップロックで作っていたときとは、明らかに「別物」なのである。

仕込み段階の味噌。ハンバーグのように丸めて空気を抜く。

口に入れる前から、もう勝負がついている。木桶の蓋をパカッと開けた瞬間、木の清々しい香りと、熟成された味噌のふくよかで芳醇な香りがふわっと立ち上るのだ。なんだか自分の台所が一瞬にして老舗の味噌蔵にでもなったかのような錯覚を覚える。

木が呼吸し、余分な水分を吸い、桶に棲みつく菌たちがゆっくりと仕事をしてくれた結晶。毎日の台所仕事の中でこの香りに触れられるだけでも、「ああ、思い切って木桶を買ってよかった」と心から思える。

知っておきたい「桶」と「樽」の違い、そしてタガの話

ところで、木桶を探すにあたって初めて知ったのだが、よく似た「桶(おけ)」と「樽(たる)」は似て非なるものらしい。

ウイスキーやワインを熟成させる「樽」は、液体が漏れないよう完全に密閉される構造になっている。一方、味噌などを仕込む「桶」は、適度な通気性があり、木が呼吸できるように作られているのだ。

また、これから木桶を買う人に強くおすすめしたいのが、周囲を締めているタガ(輪っか)が金属ではなく「竹」のものを選ぶことだ。

  • 圧倒的に風情がある:見た目の温かみや、日本の伝統工芸としての佇まいが段違いに美しい。部屋の隅にあるだけで絵になる。
  • 塩分に強く、錆びない:味噌は塩分濃度が高いため、金属のタガだとどうしても経年劣化で錆びてしまう心配があるが、竹ならその心配がなく長持ちする。

もちろん、ジップロックでの味噌作りは手軽だし、空気に触れさせないからカビも生えにくく、初心者には間違いなく最適解だ。私自身、最初はそこから始まった。

けれど、もし味噌作りを何度か経験して「もう少し深い沼を覗いてみたい」とウズウズしているなら、ぜひ木桶の世界へ足を踏み入れてみてほしい。一度この香りと味を知ってしまったら、もう後戻りはできないはずだ。

おまけ:伝統にはこだわるが、大豆は「文明の利器」で秒殺する

最後にひとつだけ、現実的な話を。5kgもの味噌を仕込むとなると、最大の難関にして最も心が折れそうになるのが「煮た大豆を潰す作業」である。1kgや2kgならまだしも、5kg分の大豆をマッシャーや足で地道に潰すのは、ちょっとした筋トレというか苦行に近い。

私は器こそ100年モノの伝統工芸品にこだわっているが、こういう下準備は躊躇なく現代の「文明の利器」に頼ることにしている。圧力鍋で大豆を指で簡単に潰れるくらいやわらかく煮たら、電動ミンサーに次々と放り込んでいくのだ。

ウニョウニョと面白いように出てくる大豆ペースト。これまでの苦労は何だったのかと思うほど、あっという間に、しかも均一でなめらかな状態に仕上がる。家でひき肉を作るために買ったミンサーだが、味噌作りの日ばかりは彼が一番のヒーローだ。

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面倒なところは機械に任せてショートカットしつつ、熟成は木の力と時間にゆっくり委ねる。この「いいとこ取り」こそが、手仕事を長く楽しく続けるコツなのかもしれない。

さぁ、今年の仕込みはどの容器で始めようか?

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