「中華鍋」という響きには、なんだか特別な憧れがある。強火でジャッ!と鍋を振る姿は無条件にかっこいい。
けれど同時に、「重そう」「管理が大変そう」「すぐ錆びさせそう」「焦がしそう」……と、脳内にあらゆる不安要素が押し寄せてくる道具でもある。それに、どこか「男の料理!」というイメージも強くて、自分が日常の台所で使いこなせる気がしない。私もそう思って、かれこれ5年以上は購入を見送り続けていた。
そんな私が「よし、試しに買ってみようかな」とあっさり心変わりしたのは、酒徒さんのこの本を読んだのがきっかけだった。
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握力20未満でも振れる「山田鉄打出の30cm」(実は振らなくてもいい)
本に触発されてお迎えしたのは、酒徒さんがおすすめしていた山田工業所の「鉄打出中華鍋(30cm)」だ。職人さんが鉄を何千回も叩いて(打ち出して)作っているため、鉄なのに薄くて軽く、熱伝導が抜群に良いという代物である。

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一番の懸念だった「重さ」だが、なんと握力20未満の私でもギリギリ片手で振れるではないか。さらに、持ち手が「木」になっているタイプを選んだので、調理中に柄が熱くならず、うっかり握って火傷をする心配が少ないのも実にありがたい。
……と、「振れる」と書いておいてなんだが、実は中華鍋は無理に振らなくてもまったく問題ない。
そもそも家庭のコンロは中華料理店のような凄まじい火力ではないので、鍋を五徳から離してガorガシャと振ると、かえって温度が下がってしまうこともあるらしい。鍋は置いたまま、木べらやザーレン(中華お玉)でシャカシャカと手早く混ぜるだけでいいのだ。中華鍋は鍋肌の面積が広く、どこに触れても熱がしっかり伝わるため、振らなくても驚くほど均一に、そして瞬時に火が通る。これを知ってから、ますます気が楽になった。
ちなみに、底が丸い北京鍋タイプを使うには「中華五徳(コンロに置く専用のリング)」が必須だと聞き、最初は真面目にセットで買って使っていた。しかしある日、ふと外してみたら「あれ、使わなくても普通の五徳にシンデレラフィットするじゃん…」という事実に気づいてしまった。それ以来、我が家では普通の五徳のまま快適に使っている。
わずか30秒の魔法。いつもの料理が別次元になる
実際に使い始めてみて、なぜ料理好きたちがこぞって中華鍋を絶賛するのか、その理由がすぐにわかった。
① 青菜炒めと炒飯が、秒速でお店の味を超える
最初に感動したのは、なんてことない「青菜炒め」だった。青菜はあらかじめ塩を振って少ししんなりさせておくのがポイントなのだが、これをあつあつに熱した中華鍋にジャッと放り込むと、本当にわずか30秒でシャキシャキの絶品炒め物が完成するのだ。
そして、みんな大好き「炒飯」。これも普通のフライパンで作っていた頃の苦労が嘘のように、1/3以下の時間で、体感5倍はおいしいパラッパラの炒飯ができあがる。自分の料理の腕が突然上がったのかと錯覚するレベルである。
② 実は「揚げ物」にこそ最強の鍋だった
さらに最近気づいた大発見が、「中華鍋は揚げ物にも最適」だということだ。
- 少しの油で済む:底に向かって丸くすぼまっているため底面積が小さく、少量の油でもしっかり深さが出る。
- 温度が下がりにくい:鉄の蓄熱性と鍋肌の広さのおかげで、食材を入れても油の温度が落ちにくく、水分がパッと飛んで唐揚げもガリッガリに仕上がる。
深さがあるから油ハネも意外と少なく、今では揚げ物のハードルまでグッと下がってしまった。
「洗剤で洗ってはいけない」は嘘だった
中華鍋を敬遠する最大の理由であろう「お手入れ」についても触れておきたい。よく「鉄鍋は油膜が落ちるから洗剤で洗ってはいけない」と言われるが、あれは嘘(というか、現代の家庭では気にしなくていい都市伝説のようなもの)だと思っている。
使い終わったら、鍋がまだ熱いうちにジャーッと湯(または水)ですすぎ、普通に洗剤をつけたスポンジでササッと洗って流すだけでいい。もしうっかり焦げ付かせてしまっても、テフロン加工のように気を使う必要はゼロ。たわしでガシガシこすり落とせば万事OKだ。
むしろ、コーティングが剥げて数年ごとに買い替えるフライパンより、ずっと気楽でたくましい相棒なのである。
結論:買わない手はない!
家でつくるなんてことない普段の料理が、ものの数十秒でお店の味、いや、揚げたて・炒めたての分だけ「お店以上」の味に化ける。
5年間ウジウジと迷っていた過去の自分に、「いいから早く買いなさい」と教えてあげたい。台所の景色と毎日のごはんが劇的に変わる中華鍋、これはもう買わない手はない!


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