「せいろ」と聞くと、なんだか『丁寧な暮らし』の象徴のようで憧れる反面、「買ったところで3日坊主になってすぐ使わなくなるんじゃないか」「うっかりカビを生やしてしまいそう」と、手を出せずに躊躇してしまう人も多いのではないだろうか。
けれど、声を大にして言いたい。実際に使ってみると、この世にこれほど便利で、むしろ忙しい人やズボラな人にこそ向いている調理道具は他にないのである。
放っておくだけで、素材のポテンシャルが爆発する
せいろの何が素晴らしいかというと、野菜もお肉も魚も、切ってポンと入れて火にかけてしまえば、あとは「放っておくだけ」で勝手に料理が完成するところだ。コンロの前に張り付いて火加減を見張る必要もないし、油も使わないからヘルシーで、何より素材そのものの旨みや甘みが驚くほど引き出される。
しかも、段を重ねて蒸せるので、下の段でメインのお肉や魚、上の段で副菜の野菜……といった具合に、一回の加熱で同時に何品もできてしまう。スーパーで買ってきたなんてことない肉まんなんかも、レンジではなくせいろで蒸すと、皮がふっくらモチモチになってびっくりするほど美味しく仕上がるのだ。

余ったお出汁で作る「具なし茶碗蒸し」のすすめ
個人的にぜひ試してほしいのが「茶碗蒸し」だ。わざわざ大きな専用の蒸し器を引っ張り出すのは面倒だけれど、せいろなら耐熱グラスに卵液を入れて10分蒸すだけで、あっという間にとろとろの茶碗蒸しができてしまう。
鶏肉やかまぼこ、銀杏なんてなくてもいい。「具なし茶碗蒸し」で十分すぎるほど美味しいのだ。お味噌汁なんかを作るついでにお出汁を少し多めにとり、余った出汁を溶き卵と合わせて蒸してみてほしい。これだけで食卓の幸福度がグッと跳ね上がる。
最初は「竹・白木」から。ハマったら「ヒノキ」の世界へ
ひとくちにせいろと言っても、使われている木の種類はいろいろあって値段もピンキリだ。
もし「自分が使いこなせるか不安」という人は、まずは手頃な価格で買える「竹」か「白木(杉など)」から始めてみるのがいいと思う。それで日常的に使えそうだな、という手応えが出てきたら、次はぜひ「ヒノキ(桧)」のせいろにステップアップしてみてほしい。
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お値段は張るけれど、立ち上る香りの良さと丈夫さがまさに桁違い。作りがとことんしっかりしていて歪みにくいため、中に大きなお皿や重たい陶器のお皿をドーンと入れて蒸してもビクともしない頼もしさがある。
そして何より感動するのが、その「気密性の高さ」だ。白木や竹のせいろと比べると、蓋や身を重ねたときの隙間が圧倒的に少ない。せっかくの蒸気が隙間から無駄に逃げないため、熱がギュッと閉じ込められ、より短時間で中までしっかり、ふっくらと蒸し上がるのである。一度この蒸し上がりの早さと仕上がりを体験してしまうと、もう他には戻れない。
サイズ選びと、専用の鍋がいらない「蒸し板」の魔法
これから買う人に伝えておきたいサイズ選びの鉄則は、「お皿がそのまま入りやすい20cm以上」かつ「同時に調理できる2段以上」を選ぶことだ。小さいサイズを1段だけ買うと、結局お皿が入らなかったり容量が足りなかったりして出番が減ってしまう。
また、「せいろを使うには専用の大きな蒸し鍋もセットで買わなきゃいけないの?」と思われがちだが、実は普段使っているフライパンで十分なのである。
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この「蒸し板(受け台)」さえあれば、お湯を張ったフライパンの上にポンと乗せるだけで、どんなサイズの鍋でも安定してせいろを乗せることができる。しかもせいろが直接お湯に触れないので、鍋のフチでせいろが焦げるのも防いでくれる優れものだ。
カビさせず、毎日使い倒すための「置き場所」と「裏技」
お手入れも拍子抜けするほど簡単で、基本は洗剤を使わず水洗い(またはお湯洗い)して、風通しのいい場所でしっかり干すだけ。お肉や魚など脂がつきそうなものを蒸すときは、下にクッキングシートやキッチンペーパーを敷いてしまえば汚れ知らずでOKだ。
そして、せいろを死蔵させない最大のコツは「しまう場所」にある。
- すぐ手に取れる特等席へ:戸棚の奥深くにしまい込むと、湿気がこもってカビが生えやすくなる上、存在自体を忘れて絶対に使わなくなる。なるべくサッと出せる場所か、いっそ見せる収納として「出しっぱなし」にするのが正解だ。
- 「温め直し」と「卵」で毎日稼働させる:ゆで卵の代わりに生卵を入れて「蒸し卵」を作ったり、冷やご飯を温め直したりするだけでも毎日使える。レンジの加熱ムラとは無縁のふっくらご飯は一度食べると病みつきになる。
さらに最後にひとつ、知っていると便利な「裏技」を。
茶碗蒸しの器や、背の高い食材を入れて蒸したいとき、「高さがつっかえて蓋が閉まらない!」ということがある。そんなときは、2段目のせいろを「上下逆さま」にして重ねてみてほしい。
こうすると2段目の底のすのこ部分が天井になり、ドームのような高い空間ができるため、背の高い器でもすっぽり収めて蒸すことができるのだ。
見た目の風情だけでなく、これ以上ないほど合理的で美味しいせいろの世界。一度台所に迎え入れれば、きっと毎日フル稼働の相棒になってくれるはずだ。


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